清水貴子さんの著書『笑顔がはじけるスパーク運動療育』を読んでいるとき、気になる言葉がありました。
それは「じゃれつき遊び」。
こんにちは。吃音あり・言語発達ゆっくりKくんを育てる母です。
「じゃれつき遊び」とは、宇都宮市のさつき幼稚園で行われているスキンシップ遊びのこと。1980年から続けられています。
「発達凸凹長男のために、私がやるべきはこれだ!」と悟った私。
「じゃれつき遊び」を実行するため、その本で紹介されていた正木健雄・井上高光・野尻ヒデ氏の著書『脳を鍛える「じゃれつき遊び」』を即決で購入しました。
この記事では、私が「じゃれつき遊び」に運命を感じ、発達凸凹Kくんと取り組んでいる理由と、家庭でできる「じゃれつき遊び」をご紹介します。
「じゃれつき遊び」は子どもの脳の発達を促す遊び
「じゃれつき遊び」は、全身を使ってじゃれ合う昔ながらのあそびのこと。
「じゃれつく」を辞書で調べてみました。
戯れ付く(じゃれつく)。子供や動物などがなれて、たわむれまつわりつく。甘えて、ふざけかかる。
デジタル大辞泉(小学館)
皆でたわむれ、甘え、ふざけて遊ぶ。一昔前まで「じゃれつき遊び」は日常の中にありました。
ところが1960〜70年頃に街や道路の整備が進み、外で子どもが自由に遊べる場所が減少。テレビ・ゲーム・ケータイが登場し、外で友達と体を動かして遊ぶ機会も無くなっていきます。
この影響は、体力面の衰えだけにとどまりません。大脳新皮質の前側にあり、意志や感情、意欲を司っている脳の大脳前頭葉の発達にも遅れが見られるようになったのです。
「子ども期」を奪われた現代の子ども
通常ならば、大脳前頭葉は段階的に発達します。
興奮も抑制も強くないそわそわ型(幼児型)
→興奮型(小学生型)
→興奮と抑制も強いが切り替えもできる活発型(大人型)
子どもの生活が変わり始めた1979年。大脳の調査を行うと、小学校に入ってもそわそわ型から成長していなかったり、「興奮」が起こる前に「抑制」が現れている子どもが多くいたのです。
一昔前なら普通に生活している中で「興奮」の強さが順調に発達していました。しかし現代の子どもは、子どもの時期に子どもらしく育たなくなったため、大脳前頭葉の発達が遅れているのです。
その結果、授業中も集中力がなく、ぼーっとしたりする子や、ひょんなことから抑制がきかなくてキレてしまう子が増えてきているといいます。
「じゃれつき遊び」で子どもの目が輝く
大脳前頭葉は、抑えきれないほどの強い「興奮」をして扁桃体を混乱させ、大脳前頭葉がそれを「抑制」する、この繰り返しの中で発達します。
「じゃれつき遊び」は大脳前頭葉の「興奮」と「抑制」の相互に強く作用するので、スキンシップやコミュニケーションを通して子どもの脳の発達を促す、最高の遊びです。
大脳前頭葉が発達すると「自己肯定感の向上」「高い向上心の維持」などの効果があるそう。体も心も健康な子どもの目は、輝いているといいます。
「じゃれつき遊び」をする理由1)凸凹脳の発達を促進するため
発達障害改善の鍵は前頭葉の発達?
じゃれつき遊びは、子どもの大脳前頭葉の「興奮」と「抑制」の相互に強く作用し子どもの脳の発達を促す、最高の遊びであると述べました。
もちろん、脳のさまざまな箇所の発達スピードに偏りがある「発達凸凹っこ」にも効果があるんです。
子どもの脳は未熟なので、色々な部分が関わり合いながら全体的に発達していくといいます。
特に前頭葉は、意志や感情・意欲を司っている部分なので、脳の中でも重要な場所。
ここが全体的に発達していくことは、発達に偏りがある子にとって非常に重要なんです。
『笑顔がはじけるスパーク運動療育』を読み、私が「じゃれつき遊び」に運命を感じたのはこの部分。
自閉症スペクトラム障害のグレーゾーンの男の子の母親である彼女は、息子さんが5歳のときに仕事で「じゃれつき遊び」に出会い、試したところ、すぐに目の輝きが違ってきたということです。その後、息子さんとともに運動をし続けたところ、中学生になる頃には、こだわりや友達関係、感覚過敏などについて、ほとんど気になるところがなくなったというのです。
清水貴子著(2016年)『笑顔がはじけるスパーク運動療育』小学館(P5)
うちの長男も発達凸凹で、言語やコミュニケーションの面での発達がゆっくり。
「じゃれつき遊び」で発達を促せるとを知り、私ができることはこれだと強く思ったのです。
「じゃれつき遊び」は最良の運動療育
スパーク運動療では、ハーバード大学医学大学院教授・医学博士・スパーク運動療育特別顧問ジョン・J・レイティ氏の理論に基づき、運動療育を提供しています。彼については、ジョン・J・レイティ著(2009年)『脳を鍛えるには運動しかない!』NHK出版 が詳しいです。
「じゃれつき遊び」を考案したさつき幼稚園も、「Sparkさつき」として児童発達支援・放課後等デイサービスを行っています。
やることは、大人も子どもも一緒に楽しみながら脳を鍛える運動。まさに「じゃれつき遊び」を取り入れた発達支援なんです。
ジョン・J・レイティ博士も、さつき幼稚園を見学し「じゃれつき遊び」を絶賛したそう。
『笑顔がはじけるスパーク運動療育』によると、運動することで発達の偏りに効果があるという理由は2つ。
- 運動すると脳神経細胞に新しい回路ができて、目立っていた脳の特性が目立たなくなるから
- 苦手だったことも別の新しい神経回路が補ってくれるので、別のやり方でできるようになるから
これを読んで、大脳前頭葉が発達すると「自己肯定感の向上」「高い向上心の維持」などの効果があるというのも、脳の回路が発達し、できることが増えた結果なのでは?と思いました。
苦手だったことが別のやり方でできるようになれば、諦めないでやった自分を褒めることができ、自己肯定感が向上する。こう考えてみようと思います。
「じゃれつき遊び」をする理由2)親と子の絆を深めるため
人間関係の土台は「母と子の愛着関係」
脳を発達させること以外で、私が「じゃれつき遊び」に興味を持った理由。それは、子どもとの愛着関係を築き直せると思ったからです。
愛着関係とは、養育者と子どもが深いところで繋がっているこころの絆のことです。愛着関係がよいと、子どもは自分自身は養育者から守ってもらえる存在であるという安心感や安全感を持てるようになり、自尊心や探求心が芽生えるきかっけともなります。
社会福祉法人麦の子会 http://www.muginoko.com/about/support/growth/
母と子がしっかり愛着関係を築けていれば、子どもは母親を安全基地にしながら親以外の人とも新しい人間関係を構築していけます。子どもにとって人間関係の土台は、母と子の信頼関係なんです。
子育ての悩みの多くは、子どもが人間関係をうまく築けないことにあるといいます。
長男も、友達と自分からコミュニケーションを取るのが苦手です。なんとなく、人に対して怯えているような様子がある時もありました。
そんなときはまず、土台となる母と子の愛着関係を築き直すことから始めるべき。
それには「じゃれつき遊び」が最適です。肌と肌との触れ合い、スキンシップをすることで、母と子の情緒的な絆が生まれます。
体験談)子どもを愛せなかった私を変えてくれた
なぜ、私は長男と愛着関係を築けなかったのでしょうか。
子どもをきちんと育てなくてという意識が先走り、子どもを無条件に愛することがどういうことなのか、わからなかったのです。
それが全ての原因かはわかりませんが、長男は私に甘えてくることがとても少ない子になっていました。
でも今更、どうしたらいいのかわからない。
じゃれつき遊びの本にも、私と同じような抱えている方の体験談が載っていました。
自然な愛情をはぐくむにはほど遠く、ほかの子のより劣ってはいないか、私は愛情深い母親に見えているだろうか、と子どもより世間の方ばかりを向いていました。
(中略)わが子を愛そうとしても愛せない罪の意識を抱えながら、子どもと私の間にある膜のようなものをどうすることもできずにいました。
正木健雄、井上高光、野尻ヒデ著(2004年)『脳を鍛える「じゃれつき遊び」』小学館(P108,109)
子どもと私の間にある膜。思わず頷きながら、自分自身と重ね合わせます。
でもこの膜が「じゃれつき遊び」をやることで変化するんです。
私はこの子のお母さんなんだ、どんなに私が不完全でも、この子のお母さんは私しかいない、私しかこの子を育てる人はいないんだと感じました。いつも、私と娘の間にあった目に見えない薄い膜がなくなった最初の日でした。
その後、膜は何度も何度も、厚くなったり。薄くなったりを繰り返しました。それでも、じゃれつき遊びをすると、そのと気は不自然な幕も消えて、子どもを素直にいとおしむことができました。
正木健雄、井上高光、野尻ヒデ著(2004年)『脳を鍛える「じゃれつき遊び」』小学館(P110)
子どもが産まれてすぐに愛着が芽生える人もいれば、そうでない人もいます。
スキンシップを通して、だんだんと育まれていくんです。
私のように5歳の子どもにだって、それ以上の年齢の子にだって、今から愛着関係を築き直すことはできます。
じゃれつき遊びは吃音児にも
長男には、発達の凸凹と共に、吃音があります。
治す方法を探している中で
「吃音児は自己肯定感が低く、甘えを出せない子が多い。わがままでもなんでも受け止めて、吃音に関係なく、自分は人から(親から)愛されているんだと思えるようになることが大切」
このような考え方を知ります。
「じゃれつき遊び」で吃音が改善するというわけではありませんが、その子が生きやすくなるために必要なことだと理解しました。
家庭でできる「じゃれつき遊び」の例
ここでは、運動療育で先生が行うような特別なものではなく、家庭でいつでもできる「じゃれつき遊び」をご紹介します。
「じゃれつき遊び」の基本はスキンシップ。抱っこ、おんぶ、こちょこちょ。
言ってしまえば、決まった型はないのです。
親子で一緒に、全力で楽しむことが大切だと、私は広く解釈しています。
例えば、うちの子はお相撲が大好きなので、積極的に誘って遊んでいます。
お相撲はスキンシップに最適。そのまま抱っこしたり、体を持ってぐるぐる回したり、こちょこちょ攻撃をしたりと、色んなスキンシップにつなげていけるんです。
外でおいかけっこをするときは、大人も一緒に走り回り、タッチを大げさに抱きついてみたり。
家族で一緒にランニングに出かけたり。
お父さんとは、ぐるりんぱやおさるの木登り、人間跳び箱、飛行機、人間ゲタをするのが好きなようです。(お父さん、いつもありがとう!)
長男は手押し車も上手になりました。
このように、その日の体調や時間に合わせて、できるものを探して取り組んでいます。
※さつき幼稚園では「朝起きて朝ごはんのまでの間の5分間の「じゃれつき遊び」で、心のエネルギーが貯まる」とお薦めしていました。
もちろん、何もできない日もあります。
そんな日でも、寝る前にはたくさん抱っこして、ギューして、チューして。
「今日もありがとう」の声かけを忘れないようにしています。
まとめ
私が「じゃれつき遊び」に運命を感じ、発達凸凹Kくんと取り組んでいる理由と、家庭でできる「じゃれつき遊び」をご紹介しました。
「じゃれつき遊び」を続けることで、親子の絆が深まり、脳の凸凹が発達します。
親子で楽しく生きるために「じゃれつき遊び」を日常に取りれてみませんか。
もっと詳しく知りたい方は、
『脳を鍛える「じゃれつき遊び」』(正木健雄、井上高光、野尻ヒデ著、小学館、2004年)を読んでみてくださいね。
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